F-04. La Tomatina

どおん。

街中に、祭りの開始を知らせる号砲が轟く。それを待ちわびていた群衆から、わあっと歓声が上がり、街中は俄に活気づいた。

「…いよいよ始まるのでござるな!」

幸村は、期待でわくわくした色を宿した瞳をきらきらと輝かせ、興奮気味に叫んだ。首には、いつもお守り代わりに身につけている六文銭と共に、水泳用のゴーグルがぶら下げられている。祭りが始まったらかけろ、と、政宗が手渡したものだ。政宗はそれと幸村の嬉しそうな顔を見比べながら、少し呆れたように笑った。

「…アンタ、本当にお祭り騒ぎが好きだよなァ」

八月の終わり、スペインのバレンシアにある街、ブニョール。ここで毎年行われる祭り、「ラ・トマティーナ」を見るため、政宗と幸村は広場に出ていた。別名「トマト祭り」とも呼ばれるこの収穫祭には、毎年世界中から街の人口の倍以上の人々が集まり、派手な盛り上がりを見せる。

「だって、とっても有名なお祭りなのでござろう?政宗殿はわくわくしないのでござるか?」
「…アンタ、これがどんな祭りなのか知らないんだろ?」
「…詳しくは知らぬでござるが、とても楽しい祭りだという事は、日本を発つ前に前田殿から聞き及んでいるでござるよ!」

幸村の無邪気な様子を見て、政宗は更に苦笑した。もともとは政宗が仕事でスペイン出張に行くことになり、折角だからと夏休み中の幸村を連れていくことにしたのだ。夏の間ずっと仕事が忙しく、幸村を放ったらかしにしていた事への罪滅ぼしに、と思った政宗は、苦労してスケジュールを調整し、なんとか幸村とのヴァカンスの時間を確保した。だが。

「…ったく、俺はゆったりと観光しようと思ってたのによ」
「え?しているではござらぬか」
「だから、こんな騒がしいトコじゃなくて、もっと観光名所があるだろ、バルセロナとかマドリードとか、あとは世界遺産とかよぉ」
「なにを失礼な!この街だって、静かだし住んでいる方々はみな親切だし、いい所でござるよ!」

そういう事が言いたいんじゃねぇよ、と、政宗は小さく溜息を吐いた。幸村との初の旅行、しかも海外。政宗としてはゆっくりと、二人きりの甘い時間を過ごす心づもりであったのだが、お祭り好きの慶次から、この「トマト祭り」の話を聞いた時から、幸村の興味はすっかりとそっちに行ってしまったのだ。

「前田の野郎、日本に帰ったら覚えておけよ」

政宗は口の中でこそりと毒づいた。確かに、この小さな田舎町も悪くはない。だが問題なのはこの祭りだ。渡航する前、インターネットで祭りの様子を調べた政宗は、パソコンの前で思わず頭を抱えた。いかにも熱血な幸村が好みそうな祭りだが、どう見ても政宗の趣味の範疇ではない。

「Jesus…」

不満げに眉を寄せる政宗の隣で、幸村は落ち着きなくうずうずしている。政宗は、これがどんな祭りなのかを教えていない。なので一体これからどんな事が起きるのかと、期待に満ちた目で街中をきょろきょろと見渡している。

「Tomate!Tomate!」

集まった人々の間から、トマトを求める声が沸き上がる。それは瞬く間に、耳を劈くような大歓声となり、街の中はうねるような熱気に包まれて、一種のトランス状態に包まれた。

「す、すごいでござるな…」

幸村がぽかんと口を開けて、興奮状態の群衆に目を遣った。歌う者、叫ぶ者、踊る者と、みな各々陽気に、期待感を表現しながら、トマトの到着を待っている。その声に応えるように、ブニョール市役所が用意したトラックが次々にやって来た。トラックの荷台には、これでもかという程の量のトマトが山積みされており、市の職員が次々にそれをトラックの外に落としてゆく。

途端、待ってましたとばかりに、狭い路地や広場を埋め尽くした人々が、わっと一斉にトマトを投げ始めた。相手などお構いなし、手当たり次第である。

「え、ちょ、そんないきなり…わっ!!」

あまりの事に驚きを隠せない幸村の顔にも、熟れたトマトが一つぶつけられた。完熟して柔らかい真っ赤なトマトを真正面に受け止め、幸村は思わず眉を寄せた。

「うう…」

トマトの汁が目に入り、視界がぼやける。政宗がゴーグルを手渡したのはこういう事か、と気付き、幸村はTシャツの裾で顔を拭って、首にぶらさげていたゴーグルを装着した。

「よし、これで準備万端でござ………うわあああああああっ!!!」

息をつく暇もなく、顔を上げた幸村に向かって、トマトの集中砲火が浴びせられた。市民は勿論、観光客達も意気揚々と、トラックから放られるトマトを我先にと掴み、見境なく投げつけまくる。トマト投げ開始からほんの僅かの時間で、人も建物も、街中にあるもの全てが真っ赤に染め上げられていた。群集が盛り上がりを見せる中、あまりの事に幸村は呆気にとられて立ち尽くし、見事にトマト投げの的になっていた。

「こ、これほど激しい祭りだとは…!!」

頭の天辺から足の先までトマトの汁まみれになり、幸村は口をあんぐりと開けた。と、その開けた口めがけてトマトが飛んでくる。これはおたおたしてはいられないと思い、ふと気がつくと、隣に居た筈の政宗の姿が見当たらない。

「あ、あれ?ま、政宗殿…?いずこに…!?」

慌てて辺りを見回す。人でごった返す広場で逸れてしまったのだろうかと、幸村はきょろきょろと政宗の姿を探した。

「政宗殿ーーー!!!」
「Hey、幸村!やられてるばっかじゃ情けないぜ?ちったぁやり返せよ!」

大声で政宗の名を叫ぶと、幸村の頭上から返事が返ってきた。不思議に思った幸村が声のした方を見上げると、すぐ目の前の建物の二階の窓枠に腰を掛けた政宗が、高みの見物をしながらのんびりと手を振っている。

「な…ッ!いつの間に…!!」

幸村は仁王立ちになって拳を胸の前で握りしめ、政宗に向かって怒鳴り声を上げた。

「ひ、卑怯なり伊達政宗ェエエエエエエ!!!降りてきて正々堂々、祭りに参加されよ!!」
「嫌なこった」

政宗は幸村を見下ろしながら、涼しい顔でしれっと答えた。そこで幸村は自分の顔に手を遣り、はたと気付いた。

「だ、だから政宗殿は自分の分のゴーグルを用意していなかったのでござるな…!」

最初から自分だけ逃げるつもりだったのだと悟り、幸村は口をへの字に曲げ、トマトに負けず劣らず顔を紅くして怒った。その間も幸村の頭や背中には、べちべちとトマトが投げつけられている。

「折角、こんな田舎町まで足を運んだんだ、せいぜい祭りを堪能しろよ」

トマトに塗れて赤鬼のようになった幸村の姿を見ながら、政宗はさも可笑しそうに笑い声を立てた。幸村は更に憤慨し、政宗を二階から引き摺り下ろしてやろうと、建物の入り口に向かって走り出した。が、地面にできたトマトの水溜りに足を掬われ、思い切り滑って、そのままひっくり返って転倒してしまった。

「うわぁっ!」
「…オイ!幸村!?」

幸村の姿は群集の中に紛れ、あっという間に掻き消えてしまった。広場ではトラックが荷台を傾け、残っているトマトを一気に落とし始めて、街中がトマトで埋め尽くされようとしている。これには流石に政宗も慌てて、急ぎ建物から外へと飛び出して、幸村を探した。

「おい、幸村!どこに居る?」

政宗は懸命に幸村を呼んだが、姿が確認できない。政宗は焦り、興奮の頂点にいる人々の間を縫って、幸村を探した。

「Shit…俺がからかったせいで…」

幸村が怪我でもしたらと、不安と心配に苛まれて、政宗の頬を汗が伝った。心に苦い後悔が走り、ぎり、と唇を噛んだその瞬間。

べち。

政宗は後頭部に軽い違和感を感じた。何事かと思い、手を伸ばして触れてみると、掌が潰れたトマトで紅く染まっていた。政宗は渋い顔をして、忌々しげに舌打ちした。

「誰だ…こんな時に…!」

と、呟くと同時に、矢継ぎ早にいくつものトマトの弾丸が飛んでくる。どれも良いコントロールで、的確に顔面を狙い打ちしてきていた。政宗は素早く、己を襲うトマトを手で打ち落とした。

「…ったく、この俺を狙おうなんざ、百年早え」

政宗は手についたトマトの汁を振り払いながら独りごちた。と、その隙を縫って、政宗の胸の真ん中に一つ、トマトが見事にヒットした。

「なッ…Shit!!」

政宗は隻眼を歪めて、トマトの飛んできた方に向けた。すると。

「ざまあみろ、でござる!」

視線の先には幸村が、山ほどのトマトを腕に抱え、してやったりという表情で立っていた。驚く政宗に向かって、幸村はなおも手の中のトマトを次々と投げつけてきた。

「政宗殿ひとりだけ高みの見物をしようったって、そうはいかぬでござるぞ!」

トマトの海の中に沈んだせいで、幸村は頭の天辺から足の先までトマトにまみれ、紅い汁がぽたぽたと滴っており、髪や顔には潰れた果肉がへばりついている。

「…てめぇ…心配したってのによ…」

政宗は口許を歪め、足元に転がっているトマトを拾い上げると、幸村目掛けて勢いよく投げた。幸村は軽やかな動きでさっとそれを避け、自分も地面に落ちているトマトを掴んで政宗に投げつけた。

「潔く当たるでござる!」
「…冗談じゃねぇ、この俺が簡単にやられてたまるかよ!」
「…往生際の悪い!」
「何がだ!」

いつの間にか政宗も幸村も、互いに我を忘れて、トマトの投げ合いに没頭していた。拾っては投げ、拾っては投げしている内に、二人の息も上がる。真夏のスペインは灼熱の太陽がじりじりと照りつけ、祭りの熱気も相まって、気温よりも肌で感じる温度は更に暑い。はあはあと息を切らし、ぼたぼたと汗を零しながら、政宗も幸村も一歩も引かず、ムキになってトマトを投げつけあっていた。

「いい加減に観念するでござる、政宗殿…!」
「それは、コッチの台詞だ!」

言い放つと、政宗は幸村の顔の中心に狙いを定め、右手の中のトマトを放った。トマトは一直線に、狙い通りの場所へ向かって飛んでゆく。幸村はそれを、頭を後ろに反らしてひょいとかわした。…だが。

「あ…うわっ!!」

散乱したトマトでできた地面の泥濘に足を掬われ、幸村はそのまま後ろに仰け反った。水掻きをするように両の手を必死に動かしてバランスを取ろうとしたが、それはむなしく空を切り、幸村の身体はそのままトマトの湖の中へ、ばしゃりと沈んだ。

「やれやれ…。勝負あり…だな」

政宗は勝ち誇ったように笑い、勝者の余裕を持って幸村の傍へ歩み寄り、すっと手を差し伸べた。

「Hey、立てるか?」

幸村は口を尖らせ、悔しげな顔をしていたが、小さくこくりと頷くと、政宗の伸ばした手に、ゆっくりと己の右手を重ねた。政宗が力を入れて幸村を引き起こそうとした瞬間。

「うわっ!?」

幸村がこれでもかというほど力任せに、政宗の身体を引っ張った。思いもよらぬ行動に政宗の身体はぐらりと揺れて前につんのめる。必死に踏み止まろうとしたが、足場の悪さに踏ん張りがきかず、幸村と同様、トマトの海にざぶんとその身を沈めた。

「て…めぇ…」
「引き分け、でござるな!」

してやったりと幸村が笑う。政宗は渋い顰め面をし、足元のトマト汁の水溜りを両手で掬って、幸村の顔めがけてばしゃりとかけた。

「…政宗殿…!!」
「俺はな、負けるって事が何よりも嫌いなんだよ!You see?」

なんとも矜持の高い物言いを聞いて、幸村ははあ、と一つ溜息を吐いた。そして徐に、かけていたゴーグルを外し、肩を竦めた。

「…分かり申した!某の負けでござるよ…」
「Of course!当然だろ」

政宗がしたり顔をしたので、幸村は呆れたように苦笑いし、口の中で小さく呟いた。

「全く、負けず嫌いな…。こういうところは子供みたいでござるな…」

政宗はトマト汁の滴る前髪を鬱陶しげに掻き上げ、天を仰いで深呼吸した。着ていた白いTシャツも汁に浸され、既に元の色を留めていない。しとどに濡れたTシャツを指で抓み、政宗は軽く舌打ちして幸村の方へ視線を流した。

「…ッたく、誰かさんのお陰で、無駄にHeat upしちまったぜ…」
「某のせいだけにするのでござるか!?」
「先に仕掛けてきたのはアンタだろうが」
「ぬぅ…」

幸村は腑に落ちないといったように、ぷうと頬に空気を溜めた。丸く膨らんで紅みを帯びた幸村の頬は、まるでよく熟れたトマトのようである。政宗は鼻先で笑い、ついと手を伸ばしてそれを人差し指で軽く突いてみた。柔らかく弾力のある肌に政宗の指が吸い込まれて沈む。政宗はそのまま、頬の中心から耳朶の下まで、するりと指を滑らせた。

「ちょ、な、くすぐったいでござる…!」

幸村が身を縮こめたのを見、政宗は口許を上げた。それとほぼ同時に、祭りの終了を告げる号砲が青い空にどおん、と轟く。周囲でトマトを投げつけ合っていた人々は、それを合図に、一斉にトマトバトルを止めた。広場や通りから、わあっという怒濤のような歓声が上がり、それは大きなうねりとなって冷めやらぬ興奮を空に巻き上げた。

「Party is over…か」

政宗が呟くと、暫し周囲の熱に浮かされたような表情をしていた幸村は、ゆっくりと政宗に向かって微笑みを向けた。

「政宗殿、ありがとうございました」
「…ン?何だよ、改まって」
「…某の我がままにお付き合い下さって。その…とても楽しかったでござる」

幸村が破顔一笑したので、政宗は左目を眇め、静かに口許を上げた。

「…アンタが楽しんだんなら、それでいい」
「…政宗殿は、楽しくなかったでござるか…?」

幸村がおずおずと政宗の顔を見上げて訊く。政宗は幸村の背中に腕を回し、己の身体にひたりと寄せて、耳元で低く囁いた。

「…まァ、たまにはこんな派手なPartyも…悪くはねェな」

政宗と幸村は顔を見合わせ、どちらからともなく、くすくすと笑い合った。通りや広場には何台もの散水車がやってきて、強力な散水ホースから水が放水された。

「う、うわっ、今度は何でござるか!?」
「街ン中をトマト塗れにしてはおけねぇだろ。こうやって今日中に洗い流しちまうンだよ」

あちこちから滝のように降り注ぐ水は激しく飛沫をあげ、初夏の日差しに照らされてきらきらと煌めき、小さな虹をいくつも作り出している。人々はトマト塗れになった体を洗い流そうと、勢いよく撒かれる水の下へと集まっている。トマトの海の中に座り込む政宗と幸村の頭上からも、冷たい水がシャワーのように降り注いできた。

「冷た…!でも、気持ちいいでござるな…!」

幸村は自分の髪に手を遣り、ぐしゃぐしゃと掻き混ぜて、さも嬉しそうな顔をした。大型犬が水浴びをしているようなその様子に、政宗は思わず喉奥でくっと笑った。そして、しとどに濡れたTシャツを徐に脱ぎ去って、潰れたトマトの実がへばりついた身体を洗い流した。

「ちょ…街中で裸になるとは、破廉恥でござる…!」
「Ha!?Tシャツ脱いだくらいで破廉恥もなにもねぇだろが?…つーか、アンタも脱いじまえ」

政宗は軽く言い放つと、幸村の着ている赤いTシャツの裾に手をかけ、ぐいと引き上げた。幸村の鍛え上げられた腹筋が露になる。政宗はそれに顔を近づけ、臍の周りに付いているトマトの果実を舌でぺろりと掬い上げた。

「ちょ、ちょ、ちょ、政宗殿!!」

幸村は驚きと羞恥で顔を赤らめ、抗議の声を上げた。政宗はお構いなしに幸村のTシャツを脱がすと、そのまま腹部から鎖骨の辺りまで、舌を這い上がらせた。幸村の身体がぶるりと震え、頬が益々紅く染まった。

「政宗殿…ッ!」
「アンタの祭りはこれでThe endだ…。だがな、俺の祭りはこれからなんだよ」

ブニョールの街中は集中豪雨にあっているかのように、あちこちで水煙が上がっている。降りしきる水の下、政宗は幸村をぐいと引き寄せると、右手を伸ばしてその顎を捉えた。

「ちょ…このような衆目の中で…!」
「誰も見てねェし」

政宗はにやりと笑うと、文句ばかりを並べ立てる幸村の唇に己のそれを重ね、言葉を奪った。容赦なく水が浴びせかけられる中で、未だ冷めぬ祭りの熱に煽られたかのように、政宗は幸村の唇を深く追った。

「まさ…ね…ど…」

冷えた身体の中で、互いの唇が熱を帯びる。未だ口付けにすら慣れぬ幸村が、身を強張らせて息を詰めている様子が、合わせた肌から政宗に伝わってくる。政宗は口の端を軽く上げて幸村の胸元に己の指先を導き、兆しだした淡桃色の突起に触れた。

「や…ッ!」

瞬間、びくっと身体が跳ね、幸村が身を反らす。政宗は楽しげに、指先で弄っていたものに顔を近づけて舌先で触れ、軽く歯を立てた。

「ちょ…!だめ…で…ござ…!!」

幸村は息を荒げながらも、抵抗するように身を捩り、しゃがんだまま一歩後退りをした。政宗が幸村の顔を見上げると、先程まで街に溢れていた、よく熟れたトマトよりも紅い顔をし、熱で火照った瞳を潤ませている。その眸子に、政宗を求める情欲の焔が宿ったことを認め、政宗は満足気ににやりと笑った。

「火ィ、点いちまったか?」
「…ばか」
「…宿に戻るか」

政宗は両手で顔を拭うと、徐に立ち上がり、へたり込んでいる幸村に向かって手を差し出した。

「立てるか?」
「…ん」

幸村が政宗の大きな手に己の手を重ねると、政宗はそれをぎゅっと握り、力強く引き起こした。幸村は勢い立ち上がり、そのまま政宗の広い胸にひたと身を預け、背中に腕を回した。

「政宗殿の、ばか」

拗ねたような、でも甘えるような声で幸村が呟く。政宗は鼻先でふっと笑って、強請るような幸村の唇に一つ、優しい口づけを落とした。

「賑やかな祭りもいいが…これから先は、アンタと二人っきりのPartyだ。存分に俺を楽しませてくれよ…」

幸村はちょっと俯き、黙って政宗の腕に自分の腕を絡ませた。広場ではまだ散水が続き、トマトで染まった家屋や群衆を洗い流している。人々の顔にはみな笑顔が溢れ、祭りが盛況のうちに終わったことを告げている。南国の甘い風に誘われるように、政宗と幸村、二人の姿も、やがて街の喧噪の中へと静かに消えていった。



2010/12/05 up

少しでも祭りの熱気が伝われば幸いです(^◇^)