A-06. Don't look away/政宗

確かに、政務をしている間中、ずっと放ったらかしにしていたのは俺だ。だが書物に夢中になってこの俺を蔑ろにするとはいい度胸じゃねぇか。さっきから何度も幸村、と呼んでいるのに、返ってくるのは生返事ばかり。俺よりも書物の方が大事か、と、ちょっと癪に障り、幸村の肩を掴んで軽く揺さぶった。

「少々お待ち下され…今良い所でござる故…」

振り返りもせずに声を返し、目は真剣に書物を追っている。この野郎、少しは俺を見ろ。そろそろ堪忍袋の緒も切れる。

「ちょ…政宗殿、いきなり何をされるか!」

腹が立ったので、有無を言わさず後ろから羽交い締めにした。首筋に舌を這わせ、耳朶を軽く噛んでやると、俄に頬が上気して赤く染まった。ここでようやく俺の顔を見たが、眉間に皺を寄せて実に不愉快そうな表情だ。可愛くねぇ、と呟いて、着物の前合わせから手を滑り込ませて肌を探れば、擽ったいと喚いて腕の中で藻掻く。

「こ、このような真っ昼間から、何を破廉恥な事を!」

相も変わらずの堅苦しい反応に、思わず苦笑が漏れる。だがこれでようやく書物から気を逸らせたようだ。それで良し、としておこうかと思ったが、小さく身を捩って抵抗する様に、俺の興が乗っちまった。このままここで抱いちまおうと、袴を脱がせようとした所で、若虎が小さく唸り声を上げた。

「ま…さむね…殿ッ!お戯れが過ぎるでござるぞ!!」

せいぜい吠えろ。虎と竜なら、竜の方が強いに決まっている。散々抵抗してみせた所で、挿れちまえばこっちのモンだ。どうせその内、大人しく身を預けてくる事になる。それまで、ガキの負け惜しみのような悪口雑言でも聞いていてやろう。

「…お、奥州筆頭ともあろう者が、かような不埒な真似を…

……しょ、精進が足りぬのでござる!某と共に鍛錬を…

………か、片倉殿に言い付けるでござるぞ!」

不覚にも笑いが止まらねぇ。ようやく袴も剥ぎ取った事だ、まずはこの口を塞いで、それからゆっくりと愛でてやろう。全く、コイツを相手にしていると、俺はいつでも飽くことが無い。さて、これからじっくりと時間をかけて幸村に教え込んでやるか。この俺から目を逸らす事など許さない、とな。



2010/02/06 up